東京大学が蓄積してきた教養教育を東アジアに向けて発信するとともに、東アジアの諸大学との教養教育・学際研究を主軸とした交流・連携を進める
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  • Tuesday June 18th, 2024 【報告】EALAI研究セミナー第2回 Sorry, this entry is only available in Japanese. 2024年5月30日(木)、東京大学駒場キャンパス101号館11号室EAAセミナー室にて、EALAI研究セミナー第2回「現代ベトナム語はチュノムで書けるか」が開催された。発表者は岩月純一氏(東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻教授)、司会は月脚達彦氏(同教授)によって務められ、清水剛氏(東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授)がコメントを述べられた。 EALAI(東アジアリベラルアーツイニシアティブ)は2005年に発足し、北京大学やソウル大学、ベトナム国家大学ハノイ校などと積極的な交流を続けてきた。今回の研究セミナーは、昨年12月に行われた清水剛氏による第1回研究セミナー「感染症・不確実性・経営―戦前日本企業の事例と国際比較」に続く第2回である。岩月氏の専門は社会言語学で、ベトナムや中国を中心に近代東アジアの言語政策史を研究されている。本セミナーでは、「現代ベトナム語はチュノムで書けるか」のテーマの下、1990年代以降に生じたベトナム国字チュノム(CHỮNÔM、字喃)の復興の動きについて概観し、現代語のチュノム表記における問題が如何にして乗り越えられ、今後どのような展開が予想されるのか、また、こうした一連の動きはどのように捉えられるのかについての議論がなされた。 まずチュノムの歴史についての説明があった。ベトナムでは漢代から唐末五代まで中国による支配が続いたため、漢文が唯一の書記言語として用いられ、独自の文字をもたず、話し言葉だけが使用されていた。その後、呉権が独立王朝を設立し、13世紀の陳朝の時代には、漢字を借用及び応用したチュノムがつくりだされた。それまで公文書等は漢字で書かれていたため漢字使用は一般化していた一方で、ベトナム固有の名称で、漢文に無い地名や人名などの語をチュノムを用いて漢文に書き加えることが目指され(文献上のチュノムの初出は10世紀)、漢字チュノム交じり文(ハンノム[漢喃]文)が形成されたり、詩や漢文の訳注などに使われていった。チュノムは漢字を様々に加工し作成されたものであり、ベトナム語と同音・同義の漢字を利用したものや、音は異なるが同義の漢字をあてたもの、同音・異義の語、偏(へん)と旁(つくり)で意味と発音をそれぞれ表す独自の造字、会意文字等々、その造字法は多岐に渡った。しかし、チュノムには多くの異体字が存在し、漢字の知識の深さによってその解釈が異なるなど、漢字を解する人々にしか読み書きができないという欠点があったために、その普及は限定的に留まった。その後、17世紀に渡来したカトリック宣教師が考案したベトナム語のアルファベット表記であるクオック・グーが、フランス植民地化によるクオック・グーの公用化や、教育・メディアなどの利用によるクオック・グーの普及につれて広く使われるようになり、チュノムは20世紀の半ばまでに「死語」と化したのである。そんなチュノムに転機が訪れる。1990年代以降、改革開放路線(ドイモイ)への転換で生じた経済的余裕によって、多様な文化が再生・実践され、その中にチュノムも含まれていた。史跡などの文化財にチュノムが使われたり、書道でチュノムが書かれたり、チュノムのUNICODE化も進められた。しかし、こうした取り組みは日用言語としてのチュノム再興を目指すものではなく、伝統文化の継承や教養としての学習に留まっているということが言える。 一方、日常言語としてチュノムを考える際に重要なことは、「外国固有名詞のような借用語をどう表記するか」ということ、さらには規範化という問題である。この問題が現在どのように乗り越えられ、今後どのような展開が予想されるのか。基本的に、クオック・グーと同様に、チュノムが外来語を取り入れる際には、漢字(中国語)を借りて転写するか、チュノムで独自に造字または仮借するかの2通りの方法がある。デジタル化・コード化に伴って自由な造字は困難になりつつあるが、近似音による転写を考えることなどにより多くの外来語にチュノムを当てる方法は考えられる。しかし、問題は「規範化」にある。チュノムには解釈の多義性や字体の複数性が存在していることは先に紹介したが、これから日常言語としてチュノムを使っていくためには、統一性をどう確保していくかを考えなければならない。ここで注目されるのは、現在インターネット上で、「好事家」の手によって「常用標準ハンノム字表(榜𡨸漢喃準常用 BẢNG CHỮ HÁN NÔM CHUẨN THƯỜNG DÙNG)」なるものが作られていることである。これは、運営者不明の「ベトナムハンノム復興委員会(委班復生漢喃越南Uỷ ban ...
  • Tuesday January 16th, 2024 【報告】EALAI研究セミナー第1回 Sorry, this entry is only available in Japanese. ご発表では企業による労働者の保護が第二次世界大戦以前の感染症流行を契機として進展したことが示されました。議論は日本の企業が労働者との関係をどのように見直していったのかという問題を中心に展開され、当時の経営者がどのような戦略を打ち出したのかに焦点が当てられるとともに、同時代のアメリカや中国でどのような対応が取られたのかにも目が向けられました。そして、感染症への対応を通して、労働者を保護する企業と、企業によって保護される労働者とのあいだでリスクを共有するという関係が構築されたことが論じられました。 ご発表を拝聴して印象的であったのは、感染症が個人のみならず企業をも「生きる」という実際的な問題に直面させるものであったということです。労働者の死は企業の「死」にもつながるわけで、労働者の命を守ることが企業が「生きる」ための緊要な課題であったことを知りました。そして、その対応の中で、合理性を重視して労働者の保護に向かう者と、実際的な問題としてだけでなくより理念的な立場からそれを行おうとする者とが経営者の中に出てくるのも興味深く思いました。長期的な視野を持ちながら実際的な生産を行う企業という存在がもたらす思考のあり方、また、それによって形成される社会のあり方や人のあり方に注意させられました。 危機の共有が社会を新たな形に変えていくことは先般のCOVID-19の流行を通して私たちが目の当たりにしているところでもあり、今回のご発表は私たちの社会が過去のいかなる経験の上に成り立つものであるのかに改めて意識を向けさせるものでありました。同時に、人文学の研究において特定の歴史的状況の中で形成される制度に注目することの重要性やその研究の可能性についても多くの示唆を受けました。     飛田英伸 (EALAI学術専門職員/総合文化研究科博士課程)
  • Friday March 9th, 2018 BESETOHA Tokyo Conference 2011 Student Panel Report "What's the role of a university -from the perspective of students and society-"
  • Friday March 9th, 2018 BESETOHA Tokyo Conference 2011 Report "Integration og Knowledge
    -The Role of Universities in an age of Advanced Technology and Globalization- "
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